この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
夢仕立工房 代表取締役社長
依田 光弘
スリランカの鉱山
沢山の行程と時間を費やし、原石はあの類い稀な光沢を放つダイヤモンドへと生まれ変わります。
鉱山の大国、スリランカ

首都コロンボからラトナプラへ
スリランカは産出しない鉱物がないほど多種多様の鉱物が算出する鉱物の大国です。 残念ながらダイヤモンドとエメラルドの算出はありません。
島全体が宝石を算出する可能性を持っていますが、地形や、治安などを含めた効率の良い産出地としては、主に島の南側に集中しています。 中でもラトナプラが中心地です。首都コロンボからは南東に約110Km、バスで約3時間の位置にあります。

土砂が堆積して出来た沖積鉱床
ではラトナプラを訪ねてみましょう。スリランカの鉱床は鉱山ではなく、漂砂鉱床です。漂砂鉱床とは鉱山から雨や河によって削り取られた土砂が堆積して出来た沖積鉱床です。これが、国中が鉱床と言われる所以です。
実際に、道路拡張工事中に鉱床に当たったという話もよく耳にします。工事途中で有望な鉱床にぶつかり、道路の建設が遅れているというような冗談ともつかない話も実は本当なのです。
首都コロンボからラトナプラへ行く途中の川です。スリランカの地形は急峻で山から直接急流が海へ流れ出しますし、護岸工事なども不十分ですので、すぐに濁ってしまいます。この急流によって土石が削り出され、次第に下流に運ばれていきます。

スリランカ最大の石造りの涅槃仏
スリランカは国民の約2/3が仏教徒であり、又仏教が国教となっています。 ガル・ヴィハーラ寺院の有名な、スリランカ最大の石造りの涅槃仏です。

採掘現場
ラトナプラ近郊の田園です。この様なのどかな田んぼに突如として採掘現場が出現します。 採掘場所の選定はとてもユニークです。敬虔な仏教徒が多いスリランカでは先ず、仏様(お坊様)にお伺いをたて、そのお告げによって場所を決めます。ですから、この様な田んぼのど真ん中でも採掘小屋が出現するのです。小屋の周りには掘削した土砂が積み上げられています。この土砂がお宝を生み出します。

掘削中の竪穴
掘削中の竪穴です。何しろ田んぼのど真ん中を掘るわけですから、すぐに水が出てきます。崩れないように木枠を廻しながら崩れないように掘削していきます。機械はほとんど使いません。手で掘り、バケツ等で集めた土砂をロープで引き上げます。この水との戦いの点がタイの鉱山とはまるで異なります。 縦に通してある棒は降りるとき捕まる手すりの役目をします。実に器用に、棒をつかみスルスルとあっという間にしたに降りていきます。登るときはロープ腰に巻き、木枠のさんを足場にして、これもあっと言う間に登ってきます。

跳ね上げ式の掘削現場
竹のバネやテコの原理を応用して土砂を運び上げる方法です。つるべ井戸みたいな原理です。この現場ではまだ水掻きを行っておりません。このように掘るとすぐ水が出てきますので、一般にはポンプを入れて水を掻き出しながら掘り進みます。 掘削したお宝の土砂です。この中にお宝の宝石が入っておりかもしれないので、土砂だと思って手を出してはいけません。ドロボーになってしまいます。


掘削場所
土砂を洗っています。これは実は別々の場所なのですが、やっている事は同じです。この作業を洗鉱といいます。 竹かごの中に土砂を入れひたすらひたすら洗います、細かな土砂はかごの目から水の中へ落ちてしまいます。そして若干傾けながら廻しこんで洗うと比重の軽い鉱物や不純物はかごの淵から落ちていきます。そして残った比重の重いもので、しかもある程度の大きさを持った鉱物だけが残るというわけです。砂金の回収も原理は同じです。 こうして掘った穴は最終的に埋め戻します。ですから、数年後にまた同じ場所を掘削する可能性もあるということになります。掘削場所は「神や仏様のみ知る」というですから・・・・

お宝を含んだ鉱物
こうして回収されたお宝を含んだ鉱物です。お宝となるにはこの中で宝石としての要素を含んだものだけです。宝石としての要素とは、綺麗であること、耐久性があること、そして希少性があることです。一見してもお分かりのように、際立った目立つ鉱物は見当たりません。そんなに簡単に宝石はゲットできないのです。

トラディショナルタイプの研磨機
動力は人力です。片方で大きな輪を廻し、ベルトで結ばれたターンテーブルに研磨剤を塗布して、鉱物を研磨していきます。いかにも旧式ですが、ゆっくり研磨することで研磨ロスが出にくいと言う利点もあります。色石は色が命ですので、色を最大限に引き出す研磨方法がベストというわけなのです。これが決まった角度で研磨するダイヤモンドとの決定的な違いです。

電動式の研磨器
横にある金属の棒に、柄の先につけた宝石の反対側を当てて力を加えて角度を決めます。そしてタンテーブルに石を押し当てて研磨していきます。 こうして回収されて鉱物の見本です。これはラトナプラの鉱物博物館に展示されているものです。多種多様な好物が展示されていました。これすべてがこの田んぼから回収されたものです。全く宝の山ですね!


ラトナプラの町外れにあるお店
掘削労働者用の生活必需品や工具等いろいろなものを取り揃えています。 ラトナプラの町の様子です。一見するとのどかな田舎町と言った感じです。しかし、すぐに、どこからともなく人々が近づいてきます。次々に買わないかと言って紙に包んだ原石やカット石を売りに来ます。気をつけてください。掘り出し物は先ずないと思ってください。ヘタをすると偽物を掴まされます。原産地でも偽物が横行しているのです。検査する器材が整っている部屋で検査しても、見間違うこともありうるのに、この劣悪な環境下では何も判別できません。あー怖い!!怖い!!


F.G.A(英国宝石学協会資格会員)
スリランカ宝石学協会の会長さんです。私と同じF.G.A(英国宝石学協会資格会員)です。右は日本の宝石学の黎明期に大きな力を日本に与えていただいたエドウイン佐々木さんです。同じくF.G.Aです。 スリランカ宝石学協会との懇親会です。スリランカは宝石が主要な輸出品です。国を挙げて宝石学の普及と啓蒙にあたっています。スリランカは産出地として、日本は消費地としてお互いに正確な情報を交換しながら、今後共より良い関係を気づいていきたいと思います。限りある地球資源である宝石を大切に扱っていきたいものです。


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