これまでも、これからも
ジュエリーリフォーム物語
11月のある日、そのご夫婦はいらっしゃいました。
ご主人様が定年を迎え、記念に奥様にリングを購入しようと訪ねてこられたのです。長年苦労を掛けたお礼にダイヤのリングを「卒業リング」として贈りたい、とのことでした。お二人は並べられたダイヤモンドを見てとても嬉しそうでした。しかし、一通りダイヤモンドをご覧になられた後、奥様がオペレーターにおっしゃったのです。
「この指輪のリフォームはしていただけないのでしょうか。」
それは、立爪の婚約指輪でした。ご主人様がご婚約の際に奥様に差し上げたものです。長い間タンスの中に眠っていたその指輪。奥様はこっそりお持ちになられていらっしゃったのです。実は、奥様は新しいダイヤのリングよりもそちらのリフォームを希望していました。
しかしご主人様は当時あまりお金もなく小さな物しか買えなかったので、感謝の気持ちも込めてどうしても新しく大きなものプレゼントしたいとおっしゃいました。そこで、リフォームと新しいオリジナルのもの、両方をお作りすることになりました。
ただ、どちらのジュエリーにもそれぞれの思いが込められています。アイテムを分けてしまうと、どうしても優劣が付いてしまうような気がしました。「2つのダイヤモンドを使って、お二人今のお気持ちを何とか表現したい」オペレーターはそう思いました。
そして考えた抜いた末、1つのデザインを提案したのです。それは、いつも身につけていられるように2つのダイヤのシンプルなリングでした。2石を一緒に利用するデザインはお二人のイメージには無く、最初は半信半疑でした。そこでオペレーターは「夢仕立」で完成予想写真を作り、お二人にお見せしたのです。
大きさの違うダイヤモンド2石を、少し斜めに抱き合う様にセットするデザイン。婚約ダイヤと新しいダイヤのツインリング。そのデザインを見たお二人はとても嬉しそうでした。デザインの詳細はお二人で決められました。
「高さは?角度は?うん、よく似合うと思うよ」ご主人様がデザインまで気にされることは、なかなかありません。オペレーターはとてもあたたかい気持ちになり、このご夫婦のお手伝いが出来たことに感激しました。
出来上がったお品物のお受け取りも、やはりお二人でいらっしゃいました。奥様はリングを見て、少し恥ずかしそうに指に付けました。その時、ご婚約のときのお気持ちがこみ上げて来たと同時に、ご主人様と歩んできたここまでの思い出も湧きあがって来たそうです。ご主人様はそんな奥様のご様子を見て、あたたかく微笑んでらっしゃいました。
あの時と同じダイヤモンドと、少し大きくなったダイヤモンド。暖かい空気に包まれ、お二人の物語がまた始まります。
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