腕時計の研磨、その方法と相場とは?

腕時計の研磨、その方法と相場とは?

みなさん、腕時計の研磨についてご存知でしょうか。長い期間、愛用して汚れや傷が目立ってきた腕時計を、専門の機械を使って丁寧に磨き、新品のような美しい状態に戻すことができるメンテナンスの一つですが、なかなか重要度が理解されていないのも事実。今回はそんな腕時計の研磨について、その詳細とコストの相場についてしっかりとご紹介したいと思います。

そもそも腕時計の研磨とは?

それではまず、腕時計の研磨について具体的にどのようなメンテナンスなのか詳しく説明していきましょう。 専門店での研磨作業には「バフ(バフモーター)」と呼ばれる研磨専門の機械が使われ、職人の手で丁寧に磨き上げられていきます。経年による細かな傷はもちろん、多少のサビなども綺麗にすることができます。修理店によっては『ポリッシュ』『新品仕上げ』『鏡面仕上げ』など呼び方が変わり、鏡のようになるほど新品同様のツヤを取り戻すことができます。ただし、全ての素材の時計が研磨できるわけではなく、ステレンレスやゴールドといった素材の腕時計にのみ行うことが可能です。チタンやメッキ、プラスチック製の腕時計は研磨することができないので注意が必要です。また、研磨を行うことでほんの少しずつですが時計表面が削られていくため、腕時計のエッジ部分が少し甘くなる場合もあります。削りすぎは時計の資産価値を下げてしまったり、見た目の質感にも影響したりもするので、高い技術力と経験が必要になってきます。 腕時計の研磨では、ケースとベルトの両方を磨く場合や、ケースのみ、ベルトのみといったようにパーツごとを研磨することもできます。腕時計の状態によって研磨が必要な場所は変わってくるので、お持ちの時計の状態を知ることが大切です。例えば、常に肌に触れるベルト部分は皮脂汚れがつきやすかったり、文字盤を保護するケースはどうしても細かな傷がつきやすかったりします。研磨で消せる傷なのかの判断も必要となってきますので、お持ちの腕時計の状態からどんなメンテナンスができるのか、まずは気になった段階で時計修理店で相談してみるといいと思います。

腕時計の研磨、仕上げ方法の違い

腕時計の研磨には、その仕上げの方法で大きく2種類に分類することができます。 一つは「ポリッシュ仕上げ」と呼ばれる仕上げの方法。「鏡面仕上げ」とも言われ、腕時計の研磨における一番基本的な仕上げの方法です。バフモーターなどの機会を使って丁寧に磨き上げることで表面の細かな傷をなくし、鏡のように光を反射するくらいにまで仕上げる方法です。最も一般的な研磨の仕上げ方法なのですが、浅く細かな傷であればポリッシュ仕上げで対応可能ですが、深い傷を完全に消すことはできません。ですので、ご自身の腕時計で細かな傷と明らかにそれよりも深い傷が確認できる場合は、ポリッシュ仕上げではカバーできない場合も想定して、修理店にて相談してみてください。 もう一つは「ヘアライン仕上げ」と呼ばれる仕上げの方法。同じ方向に細かい線状の模様を入れることで、あえて光沢を出さずにマットな質感を出す仕上げの方法です。つや出し効果のあるポリッシュ仕上げとは反対に、つや消しの効果があり、金属の落ち着いた雰囲気を出すことができます。ヘアライン仕上げは多くの高級ブランドの腕時計に施されていますが、より高度な専門的技術が必要となってきますので、大切な腕時計の資産価値を守るためにも信頼できる修理店に任せるようにしましょう。 他にも「外相仕上げ」と呼ばれるより深い傷に対応する仕上げ方法などもありますので、修理店がどの仕上げ方法まで対応しているのか、またご自身の腕時計にはどんな研磨仕上げが適しているのか相談してみるといいでしょう。専門的な道具を使い、新品同様の輝きを取り戻すことのできる腕時計の研磨作業は、大切な時計を長く使い続けるために必要なメンテナンスです。繰り返しになりますが、仕上げの種類にかかわらず、職人の高い技術力が必要となってきますので必ずプロの技術者がいる修理店に依頼することをおすすめします。

腕時計の研磨、繰り返し行ってもいいの?

プロの修理店で行われるバフモーターなどの機会を使った研磨では、実施回数が増えるほどに表面が薄くなっていきます。腕時計のケースが薄くなってしまうと防水効果が弱まってしまったり、見栄えに影響してしまったりすることもあるため、研磨の回数には注意が必要です。一般的に、研磨の回数は10回程度が限度と言われています。毎日愛用する腕時計であれば、経年による汚れや細かな傷は当たり前についてしまいますので、適切な頻度でのメンテナンスを意識していきましょう。

腕時計の研磨の作業工程

次に研磨の具体的な作業工程をご紹介していきたいと思います。

1、磨きやすくするためにパーツを分解する。

まずは、作業がしやすいようにパーツを分解していきます。研磨作業はパーツ一つ一つ丁寧に行われるため、ベゼルやガラスケース、ベルトなどを分解します。

2、腕時計のケースを研磨する

・ポリッシュ仕上げの場合 一つ一つのパーツに分解された後に、バフモーターを使って各パーツを磨いていきます。機械に当てる角度を誤るとケースを壊してしまうこともあるので、とても難易度の高い技術が必要となってきます。バフモーターで磨いてから、最後に布バフで磨くことによって完全な鏡面に仕上げることができます。 ・ヘアライン仕上げの場合 ヘアライン仕上げのみを行う場合もありますが、多くはポリッシュ仕上げを時計全体に施した後に、時計の一部をヘアライン仕上げしていく場合が多いでしょう。バフモーターにフェルトバフを取り付け、ヘアライン仕上げ専用のペーパーを使って磨いていきます。

3、バンドを研磨する

時計ケースの研磨が終わったら次にバンドの研磨に入っていきます。こちらもケース同様「ポリッシュ仕上げ」「ヘアライン仕上げ」の2種類の仕上げ方法で研磨が行われます。研磨が終わった後は最後に汚れを落として完了となります。

修理店で研磨を依頼するときの相場

修理店で腕時計の研磨を依頼した場合の相場は一般的に1万円から2万円程度です。どのパーツを研磨するかによっても値段が変わり、「ケースとバンド両方」の場合は1万円から2万円程度ですが、「ケースのみ」「バンドのみ」の場合は5,000円から1万数千円と変動してくるので、まずは修理店で相談してみてください。高級ブランドの腕時計の場合はよりコストがかかる可能性もあります。また、素材によっても料金が変わってくる場合が多く、ステンレスの方がゴールドよりも安いという傾向にあります。また素材だけでなく、形状の複雑さによって磨く技術や時間を余計に要する場合もあり、その分、料金が変動してくる場合もあります。研磨をご検討の方は一度、店頭に腕時計をお持ちいただき、お見積りを依頼することをおすすめします。

オーバーホールとセットで行うことでコストを抑える

コストを少しでも抑えたい方は腕時計のオーバーホールと同じタイミングで研磨もしてしまいましょう。オーバーホールは、パーツを一つ一つ分解して洗浄し、必要があればパーツの交換までを行うメンテナンスですが、3年から5年に1度の頻度で行うことが推奨されています。研磨作業はあまり頻繁に行うと削りすぎにつながり、腕時計の価値を下げる恐れがあるので、オーバーホールのタイミング(3〜5年に一度)に合わせて行うとちょうど良い頻度が保たれるのです。また、研磨を単独で依頼するよりもオーバーホールとセットで依頼する方が研磨コストを下げることにもなるので、タイミングと料金の点から、オーバーホールと同時に行う方が賢い方法といえるでしょう。

腕時計の研磨について専門店で相談してみよう。

腕時計の研磨について、詳細と相場についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。研磨に限らず腕時計のメンテナンス全体に共通のことですが、「自分でできる」と思わずにまずは専門店で相談し、ご自身の腕時計の状態に一番あったメンテナンスを行うことが大切です。特に研磨作業は緻密な作業と高い技術が必要とされ、見た目や資産価値に直結してくるものなので、プロに任せるのが安心です。新品の頃のような輝きを保ったまま大切な腕時計を長く使い続けるために、研磨をご検討の方はまずはご相談にお持ちいただければと思います。夢仕立では専門の技術者がお待ちしております。

資格会員ディプロマ FGA 依田 宇弘

この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘

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