この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘
金は言わずと知れた高級貴金属で、日本でも人気のある貴金属です。
プラチナ製のマリッジリングやエンゲージリングも人気ですが、輝く金色のジュエリーは、日本でも古くから人気があります。 金はかつて日本でも多く算出していたことから、金のジュエリーを譲り受ける方も多くいらっしゃいます。 金のジュエリーはその品位(純度)も様々ですが、日本ではK18製のジュエリーが主流です。 ちなみに、国際的な表記方法はK18で、18Kではありません。 「18金」という読み方をするため「18K」も18金だと思う方も多くいらっしゃいますが、「18K」は正式は表記方法ではないため、18Kという打刻があっても18金の品位ではないジュエリーが多数存在します。 この18Kの刻印は、特にアメリカ製の金製品に多く散見されます。 なお、K18は24金を100%の純度の金とした二十四分率で計算したものとなりますので、K18は「75%の金が含有されている」ということとなります。 そのため国際的な金製品の表記では「K18」もしくは「750(まれにAu750と表記することもあります)」が正式な表記となります。 また他にもK22(916)やK14(585)、K10(416)、K9(375)、K6(144)といった純度の金製品もあります。 しかしながら、金としての品位を保っている製品はK10までではないでしょうか。 金の含有率が40%を切ってしまうと、その他に混合されている地金の特徴が色濃く出てきてしまうことがあるため、金製品を購入する場合はK10以上の品位の品物が良いでしょう。 また、日本のブランドや海外ブランドでも金の製品にはK10以上の品位が用いられることが一般的です。 なかでもK18は金の品位も高く、K24やK22等の純度の高い金製品に比べると硬く、比較的傷もつきにくく、また変形しにくいためジュエリーとしては最も良い品質のジュエリーとなります。
金は比較的粘度が高く、軟らかい貴金属です。 「金は硬い」と思う方も多くいらっしゃるかと思いますが、金は密度が高く内部の結合は強いため、高い耐久性を誇ります。 また粘度が高いため、その結合が崩れにくいというところも、耐久性の高さの要因の一つです。 しかし粘度が高いため、表面の擦過により金属分子がズレやすく、そのズレた部分が小傷などになってしまいます。 そのため金製の指輪は比較的傷がつきやすい商品となります。 しかしながらK18やK14、K10などの品位にすることで硬さを出し、傷がつきにくく、変形しにくい金製品として仕上がります。 指輪は傷や変形の機会が多いジュエリーであるため、K24やK22よりもK18、K14、K10等の品位の方が向いていると言えます。
金製の指輪も他の指輪と同様に、内側の刻印に支障がない部分を選んでカットし、サイズダウンする場合はそのサイズの分削り込み、サイズアップを行う場合は地金の品位を合わせたチップを差し込んでサイズアップを行います。 他にもさまざまなサイズ直しの加工方法がありますが、この方法が主流といえます。 サイズダウンもサイズアップも上記の主流の加工方法で行うばい、ロウ付(溶接)作業が必須となります。 その際にできれば同じ品位(純度)の金ロウを使用したいのですが、同じ品位の地金を使用してしまうとロウ材が溶ける際に本体の地金も溶けてしまいます。 そのため、本体よりも少し品位の低い地金をロウ材として使用して、本体を溶かさずにロウ付する加工方法を取ることが一般的な加工方法です。(夢仕立ではこの加工手法は行いません) しかしながら本体よりも品位の低い地金を用いると、その部分の色合いが変わってしまいます。 中にはスピード重視で銀ロウや品位の低い金ロウ(K6やK3位の金)といった、低い温度で溶解するロウ材を使用する業者も多数見られます。 このようなロウ材を使用してしまうと、後々その部分が大きく変色するだけではなく、異金属の接触による電化交換がサイズ直し部分で起こってしまい、金属腐食の原因となります。 また「共付」と呼ばれる、本体の地金を溶かしながらロウ付を行う方法も一般的です。 この方法であればロウ付あとはほとんど変色することなく加工を行うことができます。 しかしながら本体のみの地金ではロウ付の際に加工部分に細かい隙間ができてしまい、耐久性を損ねてしまいます。 夢仕立では上記の手法の共付で溶接加工を行う様にしておりますが、細かい隙間ができない様に同品位のロウ材をレーザー等を用いながら埋めていくことで、耐久性を出す様に加工をいたします。 この方法は非常に手間と時間がかかり、さらに技術的にも難易度が高いため修理加工の方法として採用している工房は極めて稀ですが、最も耐久性を損なうことのない手法となりますので、夢仕立ではこの方法を採用し、経験と技術を積み重ねております。 また夢仕立では純金のリングやK22のリングといった難易度の高い金のリングのサイズ直しも承ることが可能です。 もちろん、K18やK14、K10の指輪のサイズ直しも得意としております。 金製品のリングのサイズ直しは夢仕立にお任せくださいませ。 難易度が高く他店に断られてしまった指輪のサイズ直しでも、ぜひ一度夢仕立にご相談ください。
9.0mm×14.0mmの大きなお石がついた、K18のリングのサイズ直しです。4サイズアップする加工を承りました。とても華奢なつくりの腕ですが、きれいな円形に仕上がり、サイズ直しを行った箇所も加工跡が目立ちません。お客様からご要望のあった腕部分の模様も、しっかりと残すことができました
ご主人の結婚指輪がサイズが合わなくなってしまったとの事でご来店されました。PtとK18のコンビのリングは加工の難易度が高くなります。難しい加工でしたが細かい傷も綺麗になりとても喜んで頂けました。
かなり大幅なサイズ変更(7号アップ)のため、楕円のような仕上がりになる懸念がある加工でしたが、きれいな形でお直しができました。チェーンがついた独特のデザインも崩れず仕上がっています。サイズ直し後は、きれいにお仕上げしてからお客様へお渡ししています。新品のようなピカピカの仕上がりに、驚くと同時にとても喜んでいただけたようでした。
サイズ直しは、特に大幅な変更の場合はリングが楕円に近い形になったり、デザインによっては修理箇所以外の部分に負荷がかかるおそれなどのリスクを伴う難しい加工となることがあります。こちらのリングも難易度の高い加工でしたが、独特のデザインを崩さず、きれいにサイズアップができました。夢仕立へのご相談のなかでも、特に多いご依頼のひとつがサイズ直しです。一度サイズ直しを断られてしまったリングでも、あきらめずにぜひご相談くださいませ。
K18・Pt900製のコンビリングのサイズ直しをさせていただきました。地金がコンビであることに加え、全周にもようが入ったタイプのリングですので、加工の難易度はぐっと上がります。サイズ直しと共に、リングにメレダイヤをつけられないか・・・とのご相談もいただきました。リングの厚みの関係で大きなダイヤは留められませんが、小さなダイヤを3石彫り留めすることに決定。4号アップと比較的大幅なサイズ直しでしたが、地金を足した箇所がほとんど分からないお仕上がりです。新たにダイヤの輝きも加わり、よりいっそうつけるのが楽しくなるよう生まれ変わりました。
プラチナとK18コンビのリングをお持ちになり、サイズ直しをご希望でした。コンビのお直しはとても難しく、出来ないと断るお店も多い修理です。ご夫婦とも、大きくしないとご注文頂きました。出来上りはとても綺麗に仕上がり、お二人で喜んでいらっしゃいました。
PtとK18のコンビリングのサイズ直しを行いました。通常のサイズ直しはリングを一か所切り、地金を足す方法で行いますが、このようにふちの部分がK18、内側がPtのリングで切ってしまうと加工の跡が残ってしまいます。今回はサイズ#1号UPでしたので、切らずにじんわりと伸ばす方法で加工ができました。デザインを損なうことなく綺麗なお仕上がりに、お客様にもお喜びいただけました。
K18に赤色のお石と無色透明石が敷き詰められたとても素敵なリングです。サイズ直しをご希望でお持ち込みいただきました。サイズ直しは、リング全体の形を整えていくような加工になります。こちらのように、トップの広範囲にお石が留められているお品物や、腕にかけてデザインがあるようなお品物は、その部分の形状を変えられないなどの理由でどうしても楕円になったり、サイズ直し自体が難しいお品物もございます。今回のお品物も前述の内容が懸念されましたが、夢仕立の職人によりとても綺麗にサイズ直しすることが出来ました。サイズが合わず眠っているリングや、変形してしまったリングなど、是非お気軽にご相談くださいませ。
CHAUMETのK18リングを3号UPいたしました。四角いデザインですので1箇所の長さは変わっておりますが、全体の雰囲気を損ねることなく仕上がりました。ブランドでは受け付けていないようなサイズ直しも多数承っておりますので、ぜひぜひご相談くださいませ。
この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘