この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘
ロシアで皇帝に捧げられたアレキサンドライトは、希少価値の高い宝石です。 古来から豪華な指輪に配され、ロシア王族によって身に付けられてきました。アレキサンドライトは神秘的なカラーチェンジを見せるため、指輪として身に着けると昼と夜で違ったイメージを楽しむこともできます。 こちらでは、アレキサンドライトの指輪のデザインや素材についてをご説明していきます。
アレキサンドライトは、地球上で最も希少な宝石のひとつといわれています。自然光の下では青緑色を発色しますが、夜の蛍光灯の下では深い赤色へと変化するという貴重な特質を持ちます。アレキサンドライトは鉱物クリソベリルに属する宝石で、変色効果を見せる「アレキサンドライト」と、猫目効果を見せる「キャッツアイ」の2種類に分かれます。 神秘的なカラーチェンジを見せるアレキサンドライトが最初に発見されたのは、1830年代のロシアでした。ウラル山脈にあるエメラルド鉱山で見つかったことから、当初はエメラルドと間違えられていたといいます。しかし、太陽が沈んだ後キャンドルの灯をともすと赤色を見せたことから、エメラルドとは別の宝石であることが確認されます。さらにモース硬度が8.5と、エメラルドより硬い鉱物であることが分かりました。 この新しい宝石はロシアの貴族で政治家であったレフ・アレクセイビッチ・ぺロブスキー伯爵に贈られます。伯爵は、この宝石をフィンランド人の鉱物学者ニルス・グスタフ・ノルデンショルド博士に鑑定するよう依頼しました。鑑定の結果、この石が変色効果を持つクリソベリルの一種であることを発見します。 その後この宝石はロシア皇帝に捧げられ、次期皇帝のアレクサンドル2世にちなんで「アレキサンドライト」と命名されたと伝わります。アレキサンドライトが発する青と赤の2色は、偶然にもロシア帝国の国旗の色と同じこともあり、高く称えられたといいます。 神秘的なカラーチェンジを見せるアレキサンドライトは、ロシアで爆発的な人気を得ました。希少な宝石であったことから王侯貴族や富豪だけが所有することが許されていましたが、当時のロシア王室御用達ジュエラーや高級宝飾店によって歴史に残る美しい指輪が製作されています。 ロシアの鉱山が枯渇した後はブラジルで鉱山が見つかりますが、現在は産出量が減少しています。また、スリランカではロシア産よりも大きな結晶が採掘されています。
アレキサンドライトは、昼間の太陽光の下では青緑色に輝き、夜の蛍光灯の下では深い赤色を見せるカラーチェンジ効果を持つ宝石です。このことから、「昼はエメラルド、夜はルビー」の二つの顔を持つといわれています。アレキサンドライトは6月の誕生石に選定されており、「秘めた思い、情熱、高貴」といった宝石言葉を持ちます。 アレキサンドライトはモース硬度が8.5と高いため、耐久性に優れています。ガラス光沢の強い輝きを見せ、昼と夜とで違った発色をすることから指輪としても大変豪華な存在感を放ちます。アレキサンドライトがロシアで産出していたころは、王侯貴族のみが身に着けることが許されていました。その後世界各地で発見され、時代と共に多くの人々に着用されるようになりました。とはいっても、アレキサンドライトは産出量が非常に少ない希少な宝石です。そのため価値が大変高く、市場での流通量も限られています。 現在でもアレキサンドライトは、ダイヤモンドやルビー・サファイアとともに高級な宝石として扱われています。品質やジュエリーのデザインによっては、ダイヤモンドよりも高値で取引される場合もあります。アレキサンドライトを指輪に加工する場合は、希少石であることを際立たせるラグジュアリーなデザインが施されています。 アレキサンドライトの素材には耐久性と高級感に優れたプラチナを用いることが多く、ダイヤモンドを周囲に配した華やかなデザインが主流です。アレキサンドライトの希少性とカラーチェンジの神秘性を生かすように作られています。 アレキサンドライトはロシアの皇帝に捧げられ、名前もロシアの次期皇帝を由来とすることから、高貴な印象がある宝石として知られています。落ち着いた色合いのアレキサンドライトの指輪は、気品ある装いを演出することができます。昼間は冷静な印象の青緑色、夜は情熱的な赤色の指輪として。シーンに合わせて、多彩な雰囲気を演出することができます。
アレキサンドライトはモース硬度が8.5であることから、硬度9のルビー・サファイアに次いで硬い宝石です。カットは一般的に、クラウン部分がブリリアントカットで、パビリオン部分をステップカットにした「ミックス・カット」が施されます。ほかにも、ペアシェイプやエメラルドカットが施される場合もあります。 アレキサンドライトをカットする場合には、原石が持つカラーチェンジ効果を最大限に表現する方向をクラウン面にしてカットしなければなりません。指輪をデザインする場合も同じで、カット済のアレキサンドライトの大きさやシェイプを生かしたデザインであることが大切です。そのため、指輪の加工にはカット職人やデザイナーの高い技術が必要とされます。
小粒のアレキサンドライトを何石も並べたデザインです。モチーフの上に並べたり、ベゼルセッティングで数石を配するなどバリエーションが豊富です。指輪に2石以上のアレキサンドライトを配する場合は、色や透明感、カットなどのグレードが揃ったものを選ぶことで、全体の色に統一感が出ます。
アレキサンドライトは産出量が少ないため、希少石として高く評価されている宝石です。いくつかの有名ブランドでも豪華な指輪として加工されていますが、大量には生産されていません。
イースター・エッグの製作で有名なロシアのジュエラー、グスタフ・ファベルジェが1842年に設立したブランドです。ギロッシェ技工など独特の素晴らしい技術で歴史的な作品を残してきました。
ファベルジェの情熱と技術の伝統を受け継いだメゾンでは、現在もロシアを代表する宝石アレキサンドライトの指輪を製作しています。「Emotion(エモーション)」と名付けられた指輪は、メレサイズのアレキサンドライトを幅をもたせたイエローゴールドの指輪全体にパヴェセッテイングしたデザインです。価格は問合せのみとなっています。
https://www.faberge.com/jewellery/rings/emotion-alexandrite-diamond-ring-1832#
ステップカットを施した4.90カラットのアレキサンドライトを配した指輪は、2013年12月にサザビーズの香港支店で競売にかけられました。プラチナにトラペーゼシェイプのダイヤモンド(トータル2.05ct)を両サイドに配したデザインです。競売の結果、81万2500香港ドル(約1165万円)で落札されました。
http://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2013/fine-timepieces-and-jewels-hk0479/lot.1483.html
硬度が8.5と硬く希少な宝石であるアレキサンドライトは、高級感のあるプラチナ素材が多く使用されています。プラチナは耐久性に優れており、酸や汗に強い素材です。変色や変質の心配がなく、アレキサンドライトをラグジュアリーに演出します。ダイヤモンドの白さとも映えるため、指輪に高級感が漂います。プラチナのアームにアレキサンドライトを1石配したソリティア・リングは、婚約指輪として贈ることも可能です。プラチナは輝きが長持ちするため、日常のお手入れも簡単です。指輪を外したら柔らかい布で簡単にふき取って、汗や汚れを取るだけで充分です。汚れが目立つようでしたら、中性洗剤を薄めたぬるま湯の中に入れて、柔らかい歯ブラシなどで洗います。水で泡をしっかりと洗い流したら、乾いた布で完璧に乾かします。保管する際には個別の箱や袋に入れて冷暗所に置きましょう。
ゴールドも耐久性が高く高級感のある素材ですが、プラチナより安価です。色はゴージャス感を高めるイエローゴールド、プラチナの代用として高級感のあるホワイトゴールド、女性らしく可愛いピンクゴールドの3色があり、個性や好みによって選ぶことが可能です。ゴールドは耐久性に優れていますが、細かい傷が付きやすいのが特徴です。指輪を外した後は柔らかい布でふき取るようにして、美しさを保つように心がけましょう。
シルバー素材は安価で入手しやすい素材ですが、希少で高価なアレキサンドライトの指輪として加工されることはあまりありません。天然のアレキサンドライトが配されている場合は、小粒であったり品質が低いものであることを考慮しましょう。また、シルバー素材には合成アレキサンドライトが配されていることが多くあります。購入する場合には、合成又は天然であることが説明されているかを確認されることをおすすめします。
アレキサンドライトは、色・透明感・カラット・カットのグレードによって評価されます。色は濃いほど価値が上がりますが、濃すぎて黒っぽいものは評価が低くなります。カラーチェンジは、はっきりしているほど評価が上がります。 アレキサンドライトは内包物の少ない宝石ですが、ヒビやキズなどがなく透明感が高いほど評価が高くなります。カットは全体のバランスの均一が取れており、美しい色や反射光を放つほど高く評価されます。アレキサンドライトは1カラット以下のものがほとんどなので、カラット数が大きいほど価値も高くなります。これに加えて、透明感や色、カットの評価が高いと価格もグンと上昇します。 アレキサンドライトの指輪の価格はこういった評価に加えて、使用する素材やデザイン、ブランドなどによって価格が異なります。小粒など品質によっては10万円前後から入手が可能ですが、グレードの高さやブランドによっては20万円以上の価格が付くことがあります。 また、プラチナやゴールドなど使用する素材によっても価格が異なります。ダイヤモンドが配されている指輪であれば、ダイヤモンドの品質や数によっても価格に違いが出ます。ブランド店の場合は付加価値が付くため、一般の宝石店と価格に差が出ます。直接工房やデザイナーと相談してオリジナルの指輪を製作してもらうこともできますが、この場合は店舗販売に要する費用がかからないので、その分価格を抑えることが可能となります。 アレキサンドライトは希少な宝石であるため、合成石や偽物が比較的多く出回っています。指輪を購入される際には、できるだけ信頼できる店を選ぶことをおすすめします。宝石に鑑別書が付属している場合は、記載内容をしっかりと確認しましょう。宝石が天然又は合成とはっきり説明してあることを確認し、さらに分からないことがあればショップに質問して、納得のいく買い物をするように心がけましょう。
年前位まで、日本ではアレキサンドライトとして販売されていました。 この合成石はベルヌイ法といういわゆるサファイアガラス(物体の性質上、本来は「サファイアクリスタル」と呼ぶのがふさわしい)の製法と同じ製法で作られ、カーブラインや気泡などの合成石の特徴が顕著に見られます。 また、天然アレキサンドライトとは異なりクロム由来の発色ではなく、鉄由来の発色となります。
6月の誕生石として有名なのは真珠ですが、アレキサンドライトも人気の石です。光の当たり方によって色が変化するため、「昼のエメラルド」「夜のルビー」と呼ばれています。男性への誕生日プレゼントを考えている方へ、2面性を...
アレキサンドライトは硬い宝石で、デイリーユースする指輪としても最適です。熱や光にも強く、耐久性にも優れています。指輪を外したら柔らかい布でサッとふき取るだけで十分ですが、汚れが気になるときには中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で洗い、泡を洗い流してから布で水分をふき取ります。超音波洗浄する場合には、内部にヒビがないかを確認してからにしましょう。 アレキサンドライトのことをよくご存知ではない工房や職人さんなどは「色が変わる可能性があるから、扱いたくない」、「柔らかいから扱いたくない」等と仰る方もいらっしゃるようですが、クリソベリルは硬度や靭性も高く、劈開もほとんど見られない強い石です。また、加工程度の熱で色が変化することもありません。修理のご依頼にはぜひ夢仕立をご利用ください。
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日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘