宝石のすり替えって本当にあるの?

ジュエリーリフォームをお願いするにあたって、皆さんが心配なさっていることの一つに、宝石のすり替えが起こるんじゃないか、というご心配があるかと思います。宝石のすり替えで有名な話といえば、やはり新宿伊勢丹の事件になるかと思います。

2007年に新宿伊勢丹で宝石のすり替え事件が起きました。

ジュエリーリフォームすり替え事件

宝石業界ではとても有名な事件で、ジュエリーリフォームに出したダイヤモンドがすり替えられてしまった、というものです。預けた石は2.2ctのダイヤモンドだったとのことですが、リフォーム後に戻ってきた石はキュービックジルコニアでした。このダイヤモンドは結婚10周年の記念にご主人様からプレゼントされたダイヤモンドとのことです。 このリフォームは伊勢丹から委託を受けた業者が加工を行ったということですが、裁判では「ダイヤは業者の保管中にすり替えられた」という判決となり、伊勢丹側が賠償金を支払うということとなりました。判決の根拠として挙げられていることが「元々は6本爪で留められていたが、リフォーム後のキュービックには4本爪で止められていた跡があった」というものでしたが、これだけでははっきり言って何の根拠にもなっていません。そのキュービックジルコニアは元々4本爪の石座に留められていて、回り回って、そのプレゼントされた6本爪のリングに元々留められていた可能性は否定できません。そのため、この様な判決論拠は全く意味を成しません。 このダイヤモンドは結婚10周年の記念に贈られたものとのことですが、この指輪は購入後に別の店舗でサイズ直しはしなかったのでしょうか。また、購入時にサイズ直しをおこなっていたとして、その購入店の職人がすり替えていたとしたらどうでしょうか。そもそも、キュービックジルコニアの商品をプレゼントされていたとしたら、どうでしょうか。裁判では「生活環境からこの女性が嘘偽りを言っているとは思えない」とのことでしたが、この女性が嘘偽りなく証言していたとして、そのダイヤモンドがキュービックジルコニアではなかったという証拠にはなりません。結果、落とし所として「元々は6本爪で留められていたが、リフォーム後のキュービックには4本爪で止められた跡があった」という、よくわからない理由が決定打となりました。 そもそも、「お預かりした際の石とお渡しした際の石のダイヤの同一性を確認する方法がなかった」というところが、問題であると思います。このことがなかったために、結果として裁判官や判事の感想が判決の決定だとなってしまっています。法治国家としてこの判決の論拠はどうかな、という印象ですが。 ジュエリー業界の多くの方は、この事件については「預かった時点で元々キュービックジルコニアであった」と思っている方が多いと思います。 そもそも宝石のすり替えは、割に合いません。 同じ様な類似の偽物を用意することは大変ですし、大きなキュービックジルコニアであれば、鑑定士ではなくても宝石業界の方であれば遠目でも違和感を感じます。そのため、この事件においては「元々キュービックジルコニアであった」と思っている業界の方が多いのではないかと思います。 しかしながら、反面、リスクと手間の割には割に合わないし、そのようなことで信頼を損ねて仕事を失う程のことでは無い、とはいえ、その方が海外に逃亡してしまったりしたらどうでしょうか。やはり10万円、20万円の品物であればリスクの方が大きいかもしれませんが、今回のダイヤモンドは2.2ctです。品質にもよりますが市場価格からすると1000万円を超えるものもあります。その様な品物が手元にあって、借入金の返済に困り、さらに外国籍を持っているなど、日本に二度と帰ってこなくても良い環境の方であれば、あるいは、ということも可能性としては否定できません。 グレードを下げたダイヤモンドとのすり替えは、リスクと利益のことを考えると、日本で今後生活するつもりのない方でも、すり替えを行うことはしないのではないかと思います。しかし、ダイヤモンドからキュービックジルコニアへのすり替えであれば、全く別です。すり替えが成功した場合は、ほぼ100%が利益になってしまいますので、今後日本に戻ってくるつもりのない方であれば、行ってしまうかもしれません。 ということで、私の見解としては、やはり伊勢丹新宿ですり替えが起こった可能性もあるし、その前に起こった可能性もある、ということとなり、判決のための情報が不十分で合ったというしかありません。しかしながら、裁判になるとどうしても企業側に悪意があった、とする傾向がありますので、企業としてはきちんと説明できる方法を用意しているべきですし、用意していなかった伊勢丹側に落ち度があると言えるのではないでしょうか。

どうやって石の同一性を確認するの?

夢仕立では、この石の同一性の確認に特化した特許システム「夢仕立システム」を導入しています。このシステムはお預かり時の石の特徴を顕微鏡カメラで捉え、撮影して保管、同一の画像の写真をお客さまの伝票に添付します。伝票に添付された画像は、あくまでも撮影の記録ですが、実際の画像は良い解像度の画像として保管しております。また、検品の際にも顕微鏡カメラ等で撮影し、出来上がりの写真もお客様にお渡ししています。こちらも写真はあくまで記録で、実際にはデータとして良い解像度のものを保管しています。 ダイヤモンドはほとんど無色で、品質の良いものは内包物の位置を確認しにくいものもたくさんあります。しかしながら、直径とテーブルの大きさの比率、スターファセットやメインファセット、アッパーガードルファセットなどのカット面のエッジ長さや、それぞれのファセットエッジの角度、ファセットの大きさと比率など、無色透明石の石でも極めて多くの特徴を捉えることができます。これらのポイントをとらえて画像を撮影し、独自の技術で解析をおこなって同一性の確認を行なっております。 夢仕立ではかつて、この夢仕立システムを全国に広めようとして各宝石業者にシステムの導入を促しました。しかしながらかえってきたほとんどの業者の返答は「万が一の時に宝石を変えることができないので、そこまで証明できてしまうと怖い」というものでした。結果として夢仕立システムは夢仕立工房独自で進化を遂げていき、今もなお、独自の開発と進化を進めております。 また、最近では夢仕立システムを真似て写真撮影を行なっている同業他社も多いのですが、宝石の捉え方をわかっていない、ただの記念撮影を行なっているだけの業者も散見します。同一性の確認を行うためには、「宝石の形」「宝石の特徴」「宝石の3次元での大きさ」など、最低限必要な情報を確実に捉える必要があります。また、お預かりの際とお渡しの際の比較を行うことを想定した撮影方法を行う必要があります。これらはあくまで最低限行わなければならないことで、他にももっと多くのノウハウがありますが、これは企業秘密ということで、残念ながらお伝えすることはできません。しかしながら、もし夢仕立以外で宝石をお預けになる際には、この最低限の撮影が行われているかどうか、ということだけは確認してください。ジュエリーをかっこよく斜めから撮影すると、宝石の同一性の特徴を確認することはできません。 デジタルカメラで撮影すると、宝石を2次元で捉えてしまうため、宝石の厚みや深さを確認することができません。ダイヤモンドの様な無色透明石の場合は、ピントが合わせづらいため、狙ったファセットにピントが合っておらず、ピントが合わないファセットエッジを捉えることができません。これらは一例ですが、ただ単に「写真を撮影する」というだけでは、同一性の確認を行うことはできません。残念ながら、宝石業界の方がお客さまによくお話しなさっている、 「長年ジュエリー業界に携わっているから安心してください」 「百貨店ですから安心してください」 「リピートの方がとても多いんです」 などという言葉は、残念ながら科学的根拠は一切存在せず、お客さまの宝石の同一性を確認することとは全く関係ありません。 その宝石業者は、本当に社内で製作していますか? その宝石業者は、今後も日本で営業をしていく業者ですか? 夢仕立システムは、安心してお客さまがお品物をお預けしていただくことに、最も注力して、自社で開発したものです。 このシステムはユーザビリティという言葉がまだ存在しなかった時代から、業界内でも異端とされながらも、それでも安心してお預けいただくためにはどの様なシステムが必要なのか、ということを考え続けて進化させてきたシステムです。あたたかい人柄を信じて、品物をお預けすることも良いことだと思います。夢仕立でもお客さまの想いに寄り添って、様々なご相談を承っております。その強い思いを持ちながら、それでも人情で同一性の確認を行うことはできませんので、システムでお客さまに安心をしていただく、というコンセプトで英国宝石学協会の公認企業として、飽くなきシステム開発の探求を続けております。 そこで夢仕立では、2021年より、独自開発したGAWcodoを導入いたしました。このGAWcodoは、日本一の宝石鑑定機関、中央宝石研究所で使用されている機材と同レベルの機材を用いた夢仕立の独自レポートとなります。このGAWcodoでは、内包物や外的特徴はもちろんのこと、ファセットエッジや大きさ比率などといった、その宝石独自の特徴を超高倍率の顕微鏡カメラで捉えるシステムを搭載しています。 従来の夢仕立の店頭及び検品時の顕微鏡カメラでの撮影でも超高倍率の撮影を行なっておりますが、GAWcodoでは、さらに高倍率、高解像度かつ、立体的な特徴まで捉えることが可能です。また、これらの撮影に加えて、その宝石の特徴である内包物や外的特徴の大きさや、ファセットエッジやファセット長さ、大きさ、比率、ファセットエッジ同士の角度などを検出することが可能です。先にも申し上げました通り、夢仕立ではお客さまの想いに寄り添って、様々なご相談を承っております。その思いから、飽くなき探求を続けて、現在はこのGAWcodoを開発するに至りました。 ご希望のお客様には、通常の夢仕立システムでのお預かりに加えて、GAWcodoレポートのサービスも行なっておりますので、ご希望の方は遠慮なく、お申し出くださいませ。 ぜひ一度、夢仕立のお預かりシステムを体験してください。 また、どの様な宝石がダイヤモンドの類似石と使われるのか。 主に使われるダイヤモンドの類似石や、見たことのない様な類似石もあります。 そのことについては、また、次の機会にお話しさせていただきたいと思います。

資格会員ディプロマ FGA 依田 宇弘

この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘

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