この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 優子
パリのヴァンドーム広場でオープンしたヴァンクリーフ&アーペルは、創業以来ジュエリー史に残る名作を誕生させてきた名立たるブランドです。イランやモナコの王室、アメリカの大富豪などが顧客に名を連ね、特別注文された素晴らしいジュエリーを制作してきました。世界5大ジュエラーのひとつとしても知られる、ヴァンクリーフ&アーペルの魅力を探ってみましょう。
1895年、宝石商の娘エステル・アーペルとダイヤモンド商で宝石職人の息子アルフレッド・ヴァンクリーフが結婚します。1906年にはアルフレッドとエステルの兄シャルルがビジネスをスタートし、パリのヴァンドーム広場にブティックをオープンします。1908年にはジュリアン・アーペル、1912年にはルイ・アーペルがビジネスに参加し、メゾンの確固たる歴史を築いていくことになりました。 1924年、パリ装飾芸術国際博覧会のために制作したローズブレスレット「マンシェット」がグランプリを獲得します。1926年にはアルフレッドとエステルの娘ルネ・ピュイサンがアート・ディレクターに就任、1922年からデザイナーとして活躍するルネ・シム・ラカズの協力で「パニエ・フルーリ・ブローチ」「コルレット」など、ジュエリー史に残る名作を誕生させました。 1931年、パリのコロニアル博覧会に出品した「シャポーシノワセット」が大賞受賞します。中国の伝統的な帽子からインスパイアされたジュエリーセットは、2000年にリニューアルされています。 1933年、メゾンが開発した独自のセッティング技法「ミステリー・セッティング」が特許を取得します。爪留めがジュエリーの表面から見えないセッティングで、わずか0.2㎜のゴールドネットに宝石をはめ込めるという精密な技法です。 1937年に英国ウィンザー公爵と婚約したウォリス・シンプソンは、記念としてメゾンが制作したサファイアとダイヤモンドのブレスレットを公爵から贈られます。この後公爵夫人はメゾンの顧客となり、特別注文した素晴らしいジュエリーを所有しました。 1939年、クロード・アーペルが、アメリカで最初のブティックをニューヨークのロックフェラーセンターにオープンします。 1956年にはモナコ公国のレーニエ皇太子が米女優のグレース・ケリーと婚約、皇太子は愛の証としてパールとダイヤモンドのジュエリーセットを贈りました。後にメゾンはモナコ公国御用達ジュエラーに任命されています。 1968年、幸運を象徴する「アルハンブラ・コレクション」を発表します。四つ葉のクローバーに色石を配した可憐なデザインです。色石やデザインのバリエーションが豊富で、永遠の定番アイテムとして定着しました。 1973年、日本では最初のヨーロッパ発ジュエラーとなるブティックをオープンします。1976年にはパフューム・コレクションをスタート、ブランド初の香水「ファースト」を発表します。1999年にはリシュモンの傘下となり、2011年には香港にブティックをオープンします。 2012年、パリのヴァンドーム広場にブティック「ルタンポエティック」をオープンします。同年、時計ジュエリーの専門学校がレコール・ヴァンクリーフ・アンド・アーペル財団によって、ヴァンドーム広場にオープンします。 2016年にはオーストラリアのメルボルンに、2017年にはシドニーにブティックをオープン。2018年にはメルボルンに2店目をオープンしました。現在はアメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東など世界各国でブティックを展開しています。
メゾンが独自で開発した「ミステリー・セッティング」は1933年に特許を取得しました。宝石を留める爪が表面から見えないようなセッティング技法です。厚さがわずか0.2㎜のゴールドネットに宝石をはめ込めるという大変精密な技法であるため、長期の訓練と高い技術を必要とします。植物や動物などの立体的なモチーフに使用されますが、ひとつのジュエリーの制作時間が300時間以上となるため、制作数は年間数個と大変希少です。
1924年に開催したパリ装飾芸術国際博覧会では、ローズブレスレット「マンシェット」がグランプリを受賞しました。プラチナにラウンドブリリアントカットダイヤモンド293石、エメラルド108石を配し、赤と白のバラモチーフが施されています。1931年、パリのコロニアル博覧会では、中国の帽子をモチーフにしたジュエリーセット「シャポーシノワセット」が大賞を受賞します。ポリッシュ加工のゴールドで制作されたモダンなデザインで、2000年にリニューアル版が発表されました。
メゾンでは創立以来、世界の王侯貴族や富豪、セレブたちが顧客として名を連ねています。イランのソラヤ王妃は国王と結婚して以来、顧客として数々のジュエリーを所有したことで知られます。モナコのグレース王妃はメゾンを王室御用達に任命、英国ウィンザー公爵夫人ウォリス・シンプソンは、特別注文による豪華なジュエリーを所有しました。フローレンス・ジェイ・グールドやバーバラ・ハットンなど米国の大富豪も、多くのコレクションを所有していました。
ヴァンクリーフ&アーペルでは、ダイヤモンドの4CにもうひとつのCのグレードを加えています。光の分散先と輝きを評価する「キャラクター（Character）」と呼ぶ、メゾンが独自で考案した基準です。拡大鏡でファイアーを確認し、明るさと輝きの強さを鑑定します。GIA（米国宝石学協会）が開発し世界基準であるカット、カラット、クラリティ、カラーの評価に加えることで、さらに高品質のダイヤモンドであることを証明しています。
ブランド設立以来、メゾンでは独創性に優れた芸術的な作品を誕生させてきました。海外文化から影響を得たデザインや植物や動物モチーフ、動きそうな立体的なモチーフなど。一目でヴァンクリーフ&アーペルと分かる、芸術的なデザインがブランドを象徴しています。近代ではアルハンブラ・コレクションに代表される、永遠の定番アイテムも誕生しています。ブライダルコレクションも人気で、愛の意味を込めたリングを発表しています。
ヴァンクリーフ&アーペルは、歴史と共に様々な文化や自然界からインスピレーションを得たデザインを取り入れてきました。歴史に残る素晴らしい作品から、ブランドのアイコンとなるデザインなど、多くの代表作が発表されています。メゾンを象徴する代表的なデザインの歴史を辿ってみましょう。
1920年代、中国や日本の文化から着想を得た作品を制作しました。龍をモチーフにしたドラゴンクリップやヴァニティケース、日本の漆芸を用いたパピヨンクリップ、カラーストーンで日本風景を表現したペンダントトップなどが作られました。
1922年、ツタンカーメンの墓が発見されたことによりエジプトへの関心が高まりました。スカラベやスフィンクスなど、古代エジプトの図像モチーフをカラーストーンで表現。当時流行したアールデコ調のデザインと融合した、素晴らしい作品が残されています。
インドのマハラジャがメゾンの顧客となり、インドへ渡ったクロード・アーペルは現地の豪華なジュエリーや文化から多大な影響を受けます。ヒンドゥー教や孔雀、インドの刺繍などをモチーフに、ルビーやサファイアを用いたジュエリーを発表しています。
1954年、メゾンは若い世代のための「ラ・ブティック」をヴァンドーム広場にオープン。幅広い年齢層の顧客向けにと、遊び心あるアニマル・モチーフのクリップを発表します。ゴールドに色石を配した立体的なデザインは、幸運を呼ぶお守りとして人気を博しました。
1940年代初めに考案された、バレリーナと妖精のモチーフです。ダイヤモンドと色石を敷き詰め、躍動的な姿のバレリーナや妖精が今にも動き出しそうな立体的なデザインです。アメリカの富豪たちの間で人気が高まり、数年間に渡って制作が続きました。
1968年の発表以来、メゾンを代表するアイコン的存在のコレクションです。幸運を象徴する四つ葉のクローバーを、ゴールドビーズで縁取った特徴的なデザイン。色石の種類が豊富で、デザインは「ヴィンテージ」「マジック」「スウィート」などを展開しています。
花びらが風になびいた様な立体感のある、フラワーモチーフです。ゴールドに鏡面仕上げが施されたハートシェイプの花びらが、華やかな光沢を放ちます。1輪の花からブーケなどデザインのバリエーションも豊富。可憐で女性らしい雰囲気が漂います。
自然界に生きる花の美しさを表現したフラワーモチーフのコレクションです。可憐な小花や大輪の花、ブーケなど、太陽の下で咲き誇る生命力を感じさせるデザインが揃います。フリヴォル、ソクラテス、コスモス、フルートレット、ロータス、ローズドノエルなどを展開しています。
動物や植物などの生き物をモチーフにしたコレクションです。愛らしい表情と壮大な自然を表現した「ラッキー・アニマル・クリップ」、蝶に色石やダイヤモンドを配した「ドゥ・パピヨン」、蝶やトンボなど空を羽ばたく昆虫のモチーフが揃います。
ヴァンクリーフ&アーペルでは、厳選された最高品質のダイヤモンドを配したエンゲージメントリングのコレクションを展開しています。1粒ダイヤモンドと優美なフォルムをしたアームが特徴的です。好みや予算に合わせてダイヤモンドのカラット、カラー、クラリティ（透明感）を選ぶことが出来ます。
アームがセンターに向けてやや高くなるフォルムで、ダイヤモンドを高い位置で支えたソリティアリングです。スリムなアームにはメレダイヤモンド敷き詰めた、ハーフエタニティ・スタイルです。
￥660,000～。（税込）
プラチナ、ダイヤモンド。 ダイヤモンドのカラットは、0.3ct、0.5ct、0.7ct、1.0ct。カラーグレードはDまたは E。クラリティ（透明度）はIF、 VVS1、 VVS2から選択可能です。
幅…約2.61㎜
フランス語で幸福という意味を持つ「ボヌール」と名付けられたリングです。1粒ダイヤモンドを高い位置で留め、洗練したフォルムのアームで支えています。メゾンの創業者アルフレッドと妻エステールの深い繋がりを祝う、クラシカルなデザインです。
￥511,500～。（税込）
プラチナ、ダイヤモンド。 ダイヤモンドのカラットは、0.3ct、0.5ct、0.7ct、1.0ct。カラーグレードはDまたは E。クラリティ（透明度）はIF、 VVS1、 VVS2から選択可能です。
幅…約4.8㎜ 厚み…約5.2㎜
ピンクゴールドビーズを連ねたフォルムの、現代的な印象のリングです。柔らかなラインに1粒ダイヤモンドを配し、女性らしく優しい雰囲気が漂うデザイン。メゾンに伝わる伝統的なクラフツマンシップが生かされた、美しいスタイルです。
￥495,000～。（税込）
ピンクゴールド、ホワイトゴールド、ダイヤモンド。 ダイヤモンドのカラットは、0.3ct、0.5ct、0.7ct、1.0ct。カラーグレードはDまたは E。クラリティ（透明度）はIF、 VVS1、 VVS2から選択可能です。
幅…約4.3㎜
オートクチュール界から着想を得た、華やかなデザインのリングです。曲線を描いたフォルムが1粒ダイヤモンドを優しく包み込んでいます。中心を高くしたアームに敷き詰めたダイヤモンドが、豪華な輝きを放ちます。
￥808,500～。（税込）
プラチナ、ダイヤモンド。 ダイヤモンドのカラットは、0.3ct、0.5ct、0.7ct、1.0ct。カラーグレードはDまたは E。クラリティ（透明度）はIF、 VVS1、 VVS2から選択可能です。
幅…約 3.5mm-9.0mm
メゾンの創業者アルフレッドの妻エステルに敬意を表したリングです。アームの縁にぐるりと配したビーズと、鏡面仕上げの華やかな光沢が特徴的です。センターの1粒ダイヤモンドもビーズ仕立ての爪で留め、美しい輝きを統一しています。
￥528,000．（税込）
プラチナ、ダイヤモンド。 ダイヤモンドのカラットは、0.3ctと0.5ct。カラーグレードはDまたは E。クラリティ（透明度）はIF、 VVS1、 VVS2から選択可能です。
幅…約3-4.5mm
ヴァンクリーフ&アーペルのジュエリーは、メゾンの伝統を継承するクラフツマンシップで、ひとつずつ丁寧に手作りされています。ダイヤモンドはブランド独自の5Cで評価された最高品質であるため、婚約指輪や結婚指輪としても大変人気の高いブランドです。
この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 優子
世界5大ジュエラーのひとつであるカルティエは、ジュエリー史に残る数々の名作を世に送り出してきたパリの宝石商です。パリの小さな工房からスタートしたカルティエは、世界各国の王室御用達ジュエラーとなり、現在も多くのハリウッドセレブや国内芸能人たちが愛用しています。女性の憧れの宝飾ブランド、カルティエの歴史や代表作についてのお話をお伝えしていきます。
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