この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘
パールは6月の誕生石で、石言葉は「健康」「長寿」「富」。ダイヤモンドやサファイアとは異なり、地中ではなく貝という生き物の体内で生まれる、宝石の中で唯一の有機物です。冠婚葬祭を問わず身に着けられる宝石として日本人には特に身近な存在ですが、その歴史と成り立ちには、他の宝石にはない深みがあります。
この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
日本宝石協会理事
夢仕立工房 ジュエリーデザイナー
依田 宇弘
ほとんどの宝石は地中の岩石や鉱脈から採掘され、研磨・加工を経てはじめてジュエリーとなります。パールはその点でまったく異なります。貝の外套膜から分泌される「真珠層」と呼ばれる物質が、異物を核として幾重にも包み込み、長い年月をかけてパールが形成されます。採取した時点ですでに光沢を持ち、加工なしにジュエリーとして通用する宝石は、パールだけです。
日本は世界有数の真珠産地であり、特にアコヤ真珠の養殖で世界的に知られています。三重県や愛媛県を中心に養殖技術が発達し、「真珠王」と呼ばれる御木本幸吉が1893年に世界で初めて養殖真珠の事業化に成功しました。真珠は硬度が低く傷つきやすい一方で、やわらかく上品な光沢は他の宝石にはない魅力です。
パールの石言葉は「健康」「長寿」「富」「円満」。これらの言葉は、パールが歴史の中でどのように扱われてきたかを反映しています。
養殖技術が生まれる以前、天然のパールは海に潜って偶然見つけるしかなく、ローマ帝国時代には皇帝や貴族だけが身に着けられる最高の宝とされていました。その希少性から「富」の象徴とされたのは自然なことです。東洋では古くから真珠の粉末が薬として用いられ、明代の薬学書『本草綱目』にも肌への効能や精神安定の記述が残っています。「健康」「長寿」という石言葉はこうした歴史的背景から生まれました。
「円満」という石言葉は、パールのその丸い形に由来します。パールネックレスの途切れのない円の連なりは、縁を結ぶ象徴として花嫁道具の一つにも選ばれてきました。また「人魚の涙」「月のしずく」とも呼ばれてきたパールは涙の象徴とされ、1965年にエリザベス2世がチャーチル元首相の国葬で着用したことを機に、弔事でも身に着けられるジュエリーとして世界に広まりました。
パールは育つ環境や母貝の種類によって、色・大きさ・質感が大きく異なります。代表的な4種類を紹介します。
日本を代表するパールで、三重県・愛媛県を中心に養殖されます。直径6〜8mm前後のコンパクトなサイズながら、強いテリ(光沢)と白〜クリームピンクの上品な色合いが特徴です。日本人が「真珠」と聞いてまず思い浮かべるのは、このアコヤ真珠です。
主に中国の湖や川で養殖されるパール。核を使わず外套膜の組織片のみを挿入する無核養殖が主流のため、真珠層が厚く傷つきにくいのが特徴です。丸いものから変形したバロック形まで形の種類が豊富で、価格帯が幅広いことからファッションジュエリーとしても人気があります。
オーストラリアやインドネシアの海域で養殖される、大粒のパールです。直径10mmを超えるものが多く、シルバーホワイトからゴールドまで色のバリエーションが豊富です。サイズと希少性から高級品として扱われます。
タヒチを中心としたフランス領ポリネシアで養殖されます。黒・グリーン・ブルーといった独特の深みのある色調が特徴で、他のパールにはない個性的な輝きを持ちます。
6月の誕生石はパール・ムーンストーン・アレキサンドライトの3石ですが、中でもパールは古来から世界中で6月を象徴する石として親しまれてきた、最も代表的な存在です。
日本では1958年に全国宝石卸商協同組合が誕生石を制定した当初から、パールは6月の誕生石として選ばれています。2021年の改訂でアレキサンドライトが新たに加わりましたが、パールはその筆頭として変わらず位置づけられています。
6月はジューンブライドの季節でもあります。パールの石言葉「円満」「純潔」は、婚礼のシーンとも深く結びついており、結婚式でパールのジュエリーを身に着ける花嫁は多くいます。6月生まれの方へのプレゼントとしても、パールは「健康」「長寿」という石言葉から、年齢を問わず贈りやすい宝石です。
また、結婚30周年は「真珠婚式」と呼ばれ、パートナー同士でパールのジュエリーを贈り合う風習があります。誕生石としてだけでなく、記念日の贈り物としても選ばれてきた石です。
パールを選ぶ際に最も重要なのが「テリ」と呼ばれる光沢です。表面に自分の顔が映り込むほど鮮明なテリを持つものが高品質とされます。次に「巻き」、つまり真珠層の厚みです。巻きが厚いほど光沢が深く、長年使い続けても美しさが持続します。
形は真円に近いほど希少価値が高くなりますが、近年は個性的なバロック形も人気です。色はホワイト・クリーム・ピンクが定番ですが、肌色に合わせて選ぶのがおすすめです。日本人の肌にはピンク系が映えるとされています。
パールはモース硬度2.5〜4程度と宝石の中でも特に柔らかく、汗や化粧品・香水の成分でも劣化します。身に着けた後は必ず柔らかい布で拭いてから保管してください。
保管の際は他のジュエリーと一緒にしないことが重要です。硬度の高い宝石と接触すると傷がつきます。また直射日光や乾燥した環境も変色・劣化の原因になるため、個別の布袋や箱に入れて保管してください。アルコール消毒液がかかると表面が傷むため、消毒の際は外しておくことをおすすめします。
パールネックレスは糸が伸びたり切れたりすることがあります。定期的な糸替えがジュエリーを長持ちさせる秘訣です。
パールジュエリーは長く使い続けるうちに、デザインが古くなったり、サイズが合わなくなったりすることがあります。また、祖母や母から受け継いだパールを現代的なデザインに生まれ変わらせたいというご相談も多くいただきます。夢仕立では、大切なパールを活かしたリフォームやオーダーメイドに対応しています。
ネックレスをリングやピアスに作り替えたい、一連のネックレスを短くしてブレスレットと組み合わせたい、古いデザインの留め具を新しくしたい、といったご相談のほか、パールと他の宝石を組み合わせたオリジナルジュエリーを作りたいというご要望にもお応えしています。
パールネックレスは絹糸で珠を通して仕立てられており、使用するうちに糸が伸びたり、汗や汚れで劣化したりします。糸が切れてからでは珠が散らばってしまうため、定期的なメンテナンスをおすすめしています。
夢仕立では、独自開発した特殊糸システム「ロンジェ」への糸替えを承っています。ロンジェは橋梁の技術を応用した世界特許取得の専用糸で、通常の糸の約3倍の強度を持ちます。さらに水洗いが可能になるため、使用後に汗や汚れを洗い落とすことができ、パールの美しさを長く保つことができます。
A. 身に着けた後は毎回、柔らかい布で拭くことが基本です。夢仕立のロンジェ糸に糸替えを行ったパールネックレスは水洗いが可能になるため、使用後にご自宅で洗浄することができます。
A. はい、対応しています。デザインの作り替えはもちろん、糸替えや留め具の交換など、状態に応じたご提案をしております。まずはお気軽にご相談ください。
A. 一般的な絹糸の場合、2〜3年に一度が目安とされています。夢仕立のロンジェ糸に替えると耐久性が大幅に上がり、通常使用の範囲では半永久的に糸替えの必要がなくなります。
A. ジュエリーリフォームを専門に手がける工房にご相談されることをおすすめします。夢仕立ではFGA公認宝石鑑定士が在籍しており、パールの状態を確認したうえで最適なご提案をいたします。
A. そのようなことはありません。パールは誕生石にかかわらず、年齢や性別を問わず幅広い方に愛されてきた宝石です。冠婚葬祭からカジュアルまで、さまざまなシーンでお楽しみいただけます。
パールは石言葉「健康」「長寿」「富」「円満」を持つ6月の誕生石です。地中から採掘される宝石とは異なり、貝という生き物が長い時間をかけて育む唯一の有機宝石であることが、パールを特別な存在にしています。アコヤ・淡水・南洋・黒蝶と種類も豊富で、冠婚葬祭からカジュアルまで幅広いシーンで活躍します。
大切なパールをリフォームしたい、オーダーメイドで新しいジュエリーを作りたい、パールネックレスの糸替えをしたいという方は、お気軽にご相談ください。